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雄山通信

事故したら自分で治す?従業員の事故時の賠償について。

事故したら自分で治す?従業員の事故時の賠償について。

最近、面接をしていると事故弁済の話が出てきます。社用車で事故をした際に、その事故にかかる費用を全額、従業員に持たせたりする会社もあります。

金額がだいぶ多額になることも多々あります。まあ、かるくバンパーこすっただけでも、全部交換すれば10万とか。20万とか修理費でかかるわけですからそれなりの額になりますよね。

昔の運送会社は『怪我と弁当は手前もち』なんて言葉がありまして、今考えたら労災隠しとかいろいろと言われちゃいますね。
僕も20代にいた〇〇急便では上司が怖くて、最初に頭をよぎるのは隠蔽でした。上司に報告するくらいなら、現金払えばまるく収まるんだったら・・・・なんて思ってみたり。

ただ、事故についての考え方については会社の特色が現れるし、実際にはお金が引かれるという意味では同じでも、色んな減額の考え方があります。

損害賠償

法律的な考え方

お金に悩みイメージ一般的に何かしらの故意、または過失により相手に損害を与えた場合、その損害を賠償することは認められています。

民法第709条
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と書かれているわけです。

また就業規則に懲戒事由や損害賠償請求ができる条項を規定している事で、事故が発生した際にその過失分を請求する根拠になります。就業規則は会社内のルールであり、こちらに記載がある場合はその内容を理解したうえで入社している事になるため、請求の正当性が認められることになります。(もちろん適法な範囲内でです。)

どこまでが認められる?

じゃあ就業規則に書いてあれば事故の弁済額は全部を従業員に支払わせる事がが認められるのでしょうか?

あくまで、故意や悪意をもって会社に対して損害を与えようと思った行動だったり、重過失といって単なる過失ではなくてアルコール摂取や薬物の使用など正常な運転が出来ない状態での事故の様なものは、通常の事故とは切り分けて考えます。

通常の事故の場合にはその過失や責任に対して、損害賠償をすることは可能ですが、最高裁の判例では、使用者は、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、労働者に対し、右損害の賠償を請求することができるにとどまる」とされています。

つまり全額ではなく、会社も使用者としての責任として負担しないといけないと言われています。

また、会社が加害行為の予防や損失の分散についての事前措置を講じているかが、賠償額の程度に影響すると言われており、自動車保険などの加入は会社責任として必要であり、自動車保険でカバーできる範囲は従業員の責任ではなくなるという考え方です。

判例

では、具体的に裁判ではどんな判断が下されているのか?

従業員に対する損害賠償請求についてガイドラインとなっている判例は『茨城石炭商事事件 (S51.07.08最一小判)』である。
茨城石炭商事事件 (S51.07.08最一小判)の判例

会社が自動車事故を起こした従業員に対してその全額を損害賠償として請求したが、保険の加入や勤務態度、事故の状況などから従業員の過失分はその25%が限度となった。

つまり、事故を起こしたからといってその額をそのまま従業員に対して請求できるわけではない。従業員の過失分を負担することになる。それは交通事故に対して過失があったとしても、会社側にも教育の実施や、保険の加入など、その損害を回避する義務があり、その義務を果たしていない場合は会社側の過失割合が高くなります。

懲戒処分

重労働イメージ会社は従業員に対して、損害賠償請求を起こせますが、それとは別に懲戒処分というものもあります。

「懲戒処分」とは、企業の秩序と規律を維持する目的で、使用者が従業員の企業秩序違反行為に対して課す制裁罰のことで、処分の種類には戒告、けん責、減給、出勤停止、懲戒解雇などがあります。(※日本の人事部参照)

懲戒というと重たく感じますが、口頭指導や顛末書の作成なども立派な懲戒処分の一つとなります。

減給の範囲

  • 労働基準法第91条によると、「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」
  • 減給に相当する行為が複数あった場合にも、一賃金支払期の減給額は賃金の総額の十分の一を超えてはならないため、翌賃金計算期間以降に減給する

言及をする上でもその上限が法律で設定されています。

仮に平均賃金が日給12,000円で、月給が350,000だととすると、1回の減給は日給の半額である6,000円を超えてはならず、賃金の総額の10%までなので累積でも35000円を超えることは出来ません。

除外手当

給与明細運送会社にはよく『無事故手当』というものがあります。無事故手当とは事故を起こさない場合において支払いをする手当です。また基本賃金には加算しない除外手当と呼ばれるものです。基本賃金や時給に換算するものであれば、それは基本給という扱いになるため、これを減額する場合は懲戒処分の扱いとなります。名称が無事故手当だからと言って、基本給参入しているので、そのまま減額することは違法となります。

除外手当は規定通りに運用するものであり、無事故だったから支給する。無事故でなければ支給しない。このため懲戒処分の減給扱いではありません。しかし例えば、損害の補填になるまで永続的に引き続けるというように、実質的に損害賠償を行うような場合も違法となります。

こうした運用は正しく行う事が重要であり、そのポイントは

  1. 無事故手当が基本給には加算されていない事。
  2. 無事故手当の規定が明確である事。
  3. 損害賠償や懲戒処分の代わりではなく、あくまで規定に沿った支給形態であること。

こうした事が求められます。

まとめ

自動車事故を起こした際は、重過失や故意ではなくても、会社に対して一定の損害を与えたわけであり、損害賠償を負う事はあります。しかしそれはあくまで従業員として保護された中で、過失分を補填するという事であり、損害全額を保証するのは違法となります。また懲戒処分や手当などは就業規則や労働契約、または覚書などで労使間で合意したり、明文化された内容に沿って認められる訳で、それを超える場合は違法となります。

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